愛知音楽研究会創立10周年記念
レクチャーコンサート&シンポジウム
「日本と音楽:中部地方から考える」

日時:2025年9月20日(土)13:30~18:30
会場: 名古屋市中村文化小劇場ホール

 ご来場いただきありがとうございました。

愛知音楽研究会について

愛知音楽研究会は、中部地方にかかわりのある音楽に関連する研究者が互いに研究成果を発表し、 議論を交わして励まし合う場として結成されました。 音楽に関係する様々な分野の研究者が一堂に会し、幅広い視野で考察し柔軟な思考で研究を展開していくことを 目標としています。
活動は、1~2か月に1回行う研究発表会が中心です。発表に対して意見交換の時間を長く取り考察を深めるようにしています。
よき議論・研究を中部地区から発信したいと考えております。
音楽に関する研究者だけでなく、どなたもご参加いただけます。皆様のご参加をお待ちしております。

研究会日程【→詳細】

第76回研究会
2025年10月26日(日)9:00~12:00
会場:アマノ芸術創造センター名古屋 練習室I
担当・司会:田舎片麻未
研究発表:
 押山晶子
 「錯覚の聴覚的転位
 ―ピアノ作品における作曲技法の研究と応用―」
 井上英章
 「アルヴィン・ルシエと脳波データを活用した音楽生成」



研究会報告【→詳細】

愛知音楽研究会創立10周年記念 レクチャーコンサート&シンポジウム 「日本と音楽:中部地方から考える」
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2025年9月20日(土)13:30~18:30(開場13:00)
会場:名古屋市中村文化小劇場ホール


第75回研究会 2025年8月24日(日)
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会場:名古屋市東生涯学習センター第4集会室(13:00~16:00)
担当・司会:野中亜紀
研究発表:
 黒田清子
 「『獅子と岡崎女郎衆』研究に向けて
 ―国立国会図書館デジタルコレクション史資料の整理」
 田舎片麻未
 「声と言葉で音楽に出逢うー研究と教育の間」

黒田清子さんのご発表では、江戸初期に流行した踊歌《岡崎踊(岡崎女郎衆)》は一節切や三味線、箏曲にも取り入れられ、 宿場町岡崎の名とともに全国に広まりました。童謡《蝶々》《うさぎ》の源流ともされ、文学や芸能に幅広く痕跡を残していることが紹介されました。 また獅子舞との関わりが論じられ、各地にその痕跡が残る点が大変面白かったです。
今回は特に国立国会図書館デジタルコレクションにおける史資料整理の方針が提示されました。 膨大な資料をどの観点から精査し調査を進めるかについて具体的な方法論をご教示いただけたのも大変興味深かったです。
討議では旋律の系譜や異名同曲の整理、地域をまたいだ史料比較、採譜と先行研究の照合が課題として共有されました。 さらに参加者からは《蝶々》の外国音楽由来への疑問や、フィールドワーク・民族音楽調査の苦労が語られ、 研究者同士の経験交流の意義が強調されました。

田舎片麻未さんのご発表では、ピアニストの音楽表現研究と学校教育における表現・鑑賞の学習を対比し、 専門性と普遍性の接点を再考しました。Hans Leygraf の打鍵技術に基づく音楽的メソードを紹介するとともに、 実際の音楽科教科書を比較しながら「音を探索する楽しさ」をいかに体感できるかを検討しました。
発表内ではワークショップも行われ、ため息や風を題材に声や言葉で表現を試みるなど、参加型で大変興味深い内容となりました。 体感を通じて音楽と出会う姿勢を共有することで、専門家と非専門家の視点の違いや共通点が明らかになり、 音楽教育における役割をいかに自身が担うかという問いが投げかけられました。討議では、 授業への応用や学生ごとに対応した教育現場で苦難、教育者としての自身の立場への認識理解についての深い意見が交わされました。



第74回研究会 2025年6月15日(日)
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会場:名古屋市東生涯学習センター 第2集会室(9:30~12:30)
担当・司会:高山葉子
研究発表:
 堀夏紀
 「ナディア・ブーランジェのライス・インスティチュート講義録より:フランスの「新古典主義」に関する一考察」
 白石朝子 釘宮貴子
 「和歌・俳句と音楽の出会い―レクチャー・コンサート実践に基づくフランス・ドイツ語圏のジャポニスム考察」

堀夏紀さんは、ブーランジェが1925年1月27、28、29日の3日間に渡り、ウイリアム・M・ライス研究所の客員としてテキサス州ヒューストンのスコティッシュ大聖堂で行った 「現代音楽の講演」の内容を紹介されるとともに、その中で発せられたブーランジェの言葉から、フランスにおける「新古典主義」 を理解しようとする試みについてお話しされました。
特に「現代音楽の講演」の第一部として行われた「現代フランス音楽」の講義では、ブーランジェの考える現代フランス音楽の様相や和声、 新しい和声や不協和音への言及がなされたこと、そしてそれに続きフォーレ、フランス6人組を含む全13名の作曲家の作品、 作風の紹介がされたことに注目され、そこから、「新古典主義」という用語が用いられるようになった1923年以前のフランス人作曲家 (フォーレ、およびフォーレの弟子を中心とした作曲家)の作品にも、現在一般的に考えられている「新古典主義」の諸傾向が見出せるのではないかとの所見を述べられました。
発表後にはフランスにおける「新古典主義」の美術との関連などについて活発に意見交換が行われました。

白石朝子さんと釘宮貴子さんは、2025年3月23日に愛知県立劇場小ホールで企画・開催されたレクチャーコンサート「音楽のジャポニズムー和歌と俳句の美の調べー」の構成、 選曲の意図を紹介されるとともに、来場者アンケートから見出された受容の傾向や今後の展望についてお話しされました。
研究会の会場のスクリーンに、コンサート当日にもご披露された作曲家らの顔写真や日本画が飾られた部屋の様子、演奏曲の楽譜の表紙の写真などを映されながら行われたご説明はひとつひとつ大変興味深く、 続いて見せてくださった当日の演奏動画も楽曲への深い理解に支えられた素晴らしいもので、研究会の参加者からも感嘆の声が漏れていました。お客様から寄せられたアンケートにも好意的なお言葉が多かったとのことでした。
なお、こちらのコンサートは続編を考えておられるとのことで、とても楽しみです。



更新:2025年10月1日